最後のネイル
まず知らない方も多いと思うんですが、私は兵庫県姫路市でネイルサロンをしています。
ネイリストになって10年位。
独立してからは7年ほどになります。
今はアクセサリー作ったり絵を描いたり色んな仕事をしていますが、私がまず最初になった職業はネイリストです。
ここまでが前提。
今日は長いお付き合いのお客様にネイルをさせて頂く最後の日でした。
彼女は私がネイリストになってからほぼずっとさせて頂いていたので気がつけば10年近いお付き合いになります。
ネイリストとお客様の関係は、接客業とか美容業の中でも特殊だと思っています。
ネイル中は両手塞がるのでお客様はヘアサロンの様にスマホや雑誌を見ることができません。
ジェルネイルをする際はテンポよくUVライトの中に手を出し入れして頂くので、マッサージやエステサロン、マツエクのように眠ることができません。
そして基本的には一ヶ月に一度ネイルをチェンジしていただくので(多い方は月に2度、フットするなら更にということもあります。)しばらくお会いしていないな、ということもあまりありません。
しかも平均滞在時間は2時間半はザラ。
私は口から生まれたのかと言うくらい誰とでもよく喋るので、どのお客様とも沈黙になることはあまりないのですが、
だけど冷静に考えたら仲良しの親友とすら月に一度、しかも三時間近く話すことが10年続いてるなんてそうそうありません。
長いお付き合いで、このお客様は何年も前から色もデザインもお任せでお会計まで全く見ないというのを貫いていらっしゃいました。
「こっちとこっち、どっちがいいか見てみてくださいよ」と私がお願いしても「いや!姉さんに任す!」と絶対ご覧になられませんでした。
毎回プレッシャーではありますが、
「きっと好きな感じにしてくれるだろう」
「何だこれ、最悪!にはならないだろう」
と信頼していただけているのかと思うとまた頑張ろう、もっとお好きそうなものが作れるようになろうとお客様に育てて頂いていた10年でもあったような気がします。
私のことをなぜか姉さんと呼ぶ同い年のお客様。
ネイリストにならなければ知り合いになることもなかったと思いますが、長い月日カフェで話し込むかのごとく毎月お話して
前の彼もその前の彼も知ってるし
仲良いお友達さんたちのこともたくさん知ってるし
今の職場が合併して移転する前も知ってるし
飼ってるシャネさまやクロエちゃんのことも知ってます。
夏休みの旅行とか今年のバレンタインはどこのブランドとか…。
向井理が好きとか過去には佐藤健の写真集プレゼントされてたな、とか松坂桃李を彼氏と言ってたり最近は新田真剣佑にハマってたのも知ってます。
もちろん今の旦那さまとの始まりも知っています。
きっと親や夫より色んなことをお互い知っていたと思う。
ご結婚されてからは県外にお住まいになられたのにそれでもずっと通って下さいました。
私が出産して少し仕事を休んでもすぐ、やっぱり姉さんでないと、と戻ってきて下さって。
でも今回、旦那さまの転勤で東京にお引越しされることになり今日が最後のネイルでした。
私は今、プライベートサロンなのでどのお客様も長いお付き合いの方ばかりで恵まれていると思いますが、チェーン店に勤めていた頃は一度きりのお客様もいますし、ふといらっしゃらなくなる方もいたと思います。
私はお客様どなたも本当に大好きです。
お客様がお店に来られるのは強制なんかではないし、もし急に何かあってもご家族から私にご連絡なんて来ないんじゃないか…と真剣に思ってました。
「ネイルが出来なくなってもそれは仕方ない。
そんなことよりもし会えなくなるならちゃんとお別れをさせて欲しい。もしお怪我されて入院でもされたなら教えて欲しい」
ネイリストとしての距離を間違ってるかもしれませんが、お客様という枠を超えて皆さんのことが大好きです。
大切なお客様にちゃんと最後の最後までネイルをさせていただけたことが本当に幸せでした。
最後のネイルは、お客様が着られたらお似合いになるだろうなと思ったレースのような、でも油絵みたいにちょっと立体感の出る小花柄にしました。
よく言っていたお爪やお肌が綺麗に見える「ちゅるんとした」スキンカラーはマスト。
私に10年近くネイルさせて下さりありがとうございました。
来月も会えそうな気がするのにそうじゃないなんてまだ頭の中で整理ができていませんが…。
こう思えるお客様に出会えたこと
そのお客様に長い間大事にしていただけたこと
たくさんの思い出とネイルとアクセサリーを作らせていただけたこと
本当にありがとうございました。
東京でお寿司、本当に行きましょうね。